大阪見学ツアー
5月6日(金)に、邦明研大阪見学ツアーが開催されました。
大阪では、2025年の大阪万博や、さらに先の将来に向けて、多くの再開発プロジェクトが進行中です。今回は、中央復建コンサルタンツの白水さんが大阪の街を案内して下さいました。1日というタイトなスケジュールでしたが、実際に現地へ行くことで、町の雰囲気を知り、求められるまちの将来像を一緒に考えることができました。
中之島エリア
大阪の都心部の中州である中之島エリアは、大阪市中央公会堂や大阪市庁舎、日本銀行など、重要な施設が多く立地する歴史的な地区です。島の東側は中之島公園として整備されていますが、かつてはその中央を中之島通が横切っていました。回遊性を向上させるため、2020年、この通りを廃止して公園化する事業が行われ、現在は安心して過ごすことのできる歩行者空間に生まれ変わっています。また、憩いの場として公園活用を推進するため、公園活用イベント「中之島モダンシーン」が開催されました。
北浜テラス
中之島の南側、土佐堀川を挟んだ対岸の北浜地区では、川に面する店舗が桟敷席を設置する「北浜テラス」というプロジェクトが進行中です。京都の鴨川のような川床をつくり、賑わいのある水辺の風景を生み出すことを目指しています。従来、河川敷は公共空間であり、その占有は制限されていますが、ビルオーナーや地元NPOの活動が実り、民間団体による活用が認められた先駆的な例です。
道頓堀・御堂筋
グリコの看板で有名な大阪・ミナミの繁華街、道頓堀。雑多な雰囲気の場所ですが、川沿いには遊歩道が整備されています。
また、道頓堀と交差する大阪のメインストリート・御堂筋では、車中心の通りから人中心の通りへの転換を目指す「御堂筋将来ビジョン」が策定されています。現在、御堂筋は本道と側道に分かれていますが、まず側道を廃止し歩行者空間に移行した後、将来的にはフルモール化を目指す計画です。
なんば駅前
大阪のターミナルの1つ、南海なんば駅の駅前は、現在タクシープールなどが置かれ、周辺の繁華街へ行くには狭い歩道を歩いたり、道路を横断したりする必要があります。そこで、タクシー乗降場を別の場所へ移した上で、空いたスペースを約6,000㎡に及ぶ歩行者空間に生まれ変わらせるプロジェクトが進んでいます。2021年には実際に車両を通行止めにした社会実験が実施され、現在は2025年の完成を目指して工事が行われています。
新世界エリア
大阪のシンボル、通天閣で有名な新世界は、戦前から庶民の町として発展し、親しまれてきたエリアです。私鉄のターミナル駅に客を奪われるなどして一度は衰退しましたが、通天閣の再建などを経て、現在はレトロな雰囲気を味わえるエリアとして再評価されています。大阪らしいディープな雰囲気を残しつつ、地域をアップグレードしていくことが今後のテーマです。
コロナ禍の最中、新今宮駅前に2022年に誕生したばかりの「OMO7 大阪 by 星野リゾート」。線路を挟んだ反対側は、日雇い労働者の街として知られ、かつては多くの暴動も発生した「あいりん地区」が広がります。このような場所への大型ホテルの進出は、業界を驚かせました。しかし、関西国際空港から電車で1本、周辺には新世界など大阪らしさを味わえるエリアが多く、観光資源には恵まれています。また、西成の町では、簡易宿泊所の多い土壌を活かしたバックパッカーの町としても注目されています。「労働者の町」から「観光の町」へと転換する取り組みが続いています。
▶ OMO7大阪(星野リゾート)
▶ 「今…なぜそこにホテル?〜星野リゾート 前代未聞の挑戦」(テレビ東京)
▶ 新今宮ワンダーランド
十三エリア
大阪駅と新大阪駅の中間に位置する十三地区。現在は阪急電車のターミナル駅ですが、今後、地下鉄なにわ筋線が開業する予定で、乗換駅かつ3空港まで1時間以内という立地のポテンシャルが注目されています。一方、現在は商店街や居酒屋の多い庶民的なエリア。大阪らしい古き良き「カオス文化」と「新しい街」を融合し、淀川越しに梅田のビル群を望む、ニューヨーク・ブルックリンのようなエリアを目指します。
また、淀川の河川敷は、2025年大阪万博の開催に向けて、「空飛ぶ車」の発着所の設置が計画されています。線路や道路で分断された町並みを統合し、交通ハブとしての立地を活用しながら、オープンスペースの拡充などを通じた新しいまちづくりが進められています。
今回の大阪ツアーを通して、古き良き庶民的な大阪の雰囲気を残しつつ、社会の変化に合わせて地域をアップグレードするのが、とても難しい課題だと感じました。大阪では、それぞれの地区で、それぞれの持ち味をいかした様々な再開発が計画され、大変勉強になりました。